アポなしで大連の病院で漢方薬を処方してもらったお話(前編)

7月、海の日の連休明けから北京に出張することになり、4月にマカオで開催された学会で知り合った大連の大学の先生に連絡してみた。すると「いつ大連に来るんだい?」との返事があり、連休中に一足早めに現地入りをした。

旅行に行く際にツアー派の読者の方も多くいらっしゃると思うが、ぜひオススメしたいのが、「市内を走るバスに飛び乗る」こと。
ホテルの名刺といくらかの現地通貨を持ってさえいれば、バスを降りて迷ったとしてもタクシーでホテルに戻ることができるので、さほど心配することはないはず。地下鉄だと街並みを楽しむことができず、ここはひとつ「電車でGO!!」ならぬ「バスでGO!!」
ということで、とにかくバス停に来たバスに乗ってみた。野球の名バッターの言う「来た球を打つ」並みに「来たバスに乗る」の心境やね。

大連のバスは本数が非常に多く、しかも運賃が1元(約16円)と破格の安さ!かと思いきや、車内には各停留所の名前が書かれた電光掲示板があり、次のバス停がどこなのかを明示してくれるという近代的な仕様。終点までを目で追ってみると、「中医院」というバス停があることに気付いた。「中医院」とは要するに「漢方薬の病院」のことで、中国や韓国の街中ではよく見かけます(韓国では한의원)。

とりあえずそのバス停で下車し、少し古びた外観の病院に向かってみることに。玄関が開いていてどうやら人もいるようなので、まずは入って様子を見よう。

壁には医師の写真と専門が掲示されていて、その隣には漢方の原料というか素材というか、植物に混じってサソリなどが瓶に保存されてディスプレイされている。その数およそ100種類。

3か所ある窓口のひとつに行き、中国で使える保険証や身分証明書もない状態で

「日本から来た。先生に診てもらうことはできますか?」

と、なんちゃって中国語で尋ねてみる。すると、

「どういう症状なんだい?」(これは想像と推測のミックス)

らしき質問をされたのでお腹をさすってみせた(胃腸が弱いのは事実)。
どうやら通じたようで住所、氏名、名前や年齢を書く用紙を差し出された。もちろん電話番号を書く欄もあり、そこは日本の携帯電話の番号をとりあえず国番号に続けて書く。それがパソコンに入力され、まずは13元(約210円)を支払うように求められる。支払うと医師の名前が書かれた用紙に支払い済みのハンコを押してくれ、2階に行くように指示された。
「小鑫」という、「金」という字を3つ組み合わせて、少しはお金持ちそうな名前の先生の診察室に向かう。すぐに診察が始まり、お腹が痛いことをジェスチャー込みで伝えると、

「いつからだい?」(またしても推測)

と尋ねられ、

「最近のことではなく、小さい頃からずっと」

と答えるもあまり通じなかったようで、何度かこの手のやり取りを繰り返すうちに先生に

「You must have translator」(通訳を呼んできなさい)と紙切れに書かれる始末。

このままではまともに診察してもらえない雰囲気になってきたので、日本にいる知り合いの中国人にスマートフォンのアプリで通訳を頼むことに。運良くすぐにつながり先生と通話を開始。胃腸の他にも

「夜、あまり眠れない」

「血圧が低い」

「口の中が乾いている」

など複数の症状を伝えてもらったところ、それからの先生は積極的に問診をしてくれるようになり、

まずは繰り返し脈を診たあと

「舌を見せて」とか

「水爱不爱喝」(水を飲むことは好きか?)

などと質問された。ほどなくして先生は用紙に所見を手書きして、それを持って1階に行くようにと指示された。

1階で先に薬代を支払うシステムのようで、94元(約1500円)を支払う。それを処方の窓口で白衣を着た女性に渡して待つことおよそ15分、いろんな植物と少しの生物(?)が入った半透明のビニール袋を1週間分として7つ持って再登場。ビニール袋の封は閉じられていないため、いかにも漢方薬らしき香りがプンプン。

「それで、これをどうやって飲めばいいの?」

これを確認するのも一苦労。診察中に通訳してくれた日本の知人は、外出先でバッテリーが切れかかっているとのことだったので、通訳を頼めそうにない。
すると、日曜日の16時を過ぎて閉院直前の人気のない病院のロビーで、一人の女性がこちらに向かって走ってくるではないですか!
次の瞬間、その女性は

「どうしたんですか?」

と尋ねてくれ、状況を説明すると窓口の薬剤師(?)から煎じ方を聞き出し、

「最初に30分から40分煮て、それから火を弱くして10分ほど煮て・・・」

となかなか上手な日本語で説明をしてくれる、とっても親切な方だった。
尋ねてみると、日本に留学したことはないものの、日本語を勉強しているとのことだった。
朝は朝食前、夜は夕食後に飲むということまでわかったので、7袋の漢方薬を引っさげて病院を後にした。

どうやら私が最後の患者だったようで、会計窓口も処方窓口も閉まり、人気もまばらになった中医院の待合室。

念のために、窓口に貼られていた「薬の煎じ方の説明」をスマートフォンで撮影。映り込んでいるのはブロガーK本人。。。

次号、日本に持ち帰った漢方薬を煎じて飲んでみたお話へと続く。